ナタリーのバナナを読んで思ったこと

 

時々目にする「BL化」「二次創作」といったアニメ版スタッフによる私物化ではなく、むしろ監督(もしくは他のメインスタッフ)自身があの作品に対して親身ではないことが原因なんじゃないか、と思った。

てっきり監督も往年のファンかと思ったら、オファーがきて初めて読んだそうで、昔からの愛読者から見れば立派な新参者(昨年初めて読んだ私と同じ)。だから時代変更やそれに伴いキャラクターデザイン(服装や髪型)を変えることに対する原作ファンの気持ちを理解できないんじゃないか。だからあんなに軽いノリで話せてしまえるんじゃないか。

正直時代設定やキャラデザの変更は悪い選択ではないと思う。私が監督でも多分そうする。ただ現代にアップデートなんていう大改編を行うなら、当然原作漫画家の協力をあおぐべきだった。漫画家監修の元なら、原作愛読者ももう少し不安にならずに済んだろうに。

原作に大胆な変更を加える割に、慎重さが足りないのだ。あの制作発表会でまず一番に示すべきだったのは、キービジュと声優の発表ではなく、「自分たちはこの作品を心から愛し尊重しているが、今の時代にアニメーション化するに当たって苦渋の決断でこれこれこうすることにしました」という謙虚かつ真摯な姿勢だった。原作を預かる身としての心構えだった。決して浮かれハイテンションと取られるような言動じゃなかった。いかにも女性受け狙ってますなコメントではなかった。

 

というか、そのテの作戦会議くらい、しろよ…視聴者がどう受け取るかのシミュレーションとか、しないのかよ…

 

 

もうこれからは、何かをすごく好きになっても、それを作った人に「作ってくれてありがとう」と思うのをやめる。伝えるのもやめる。作品は天から降ってきたもので、その天からの賜り物だけを愛し、感謝の気持ちを何かしらの形として差し出すこともやめる。じゃないとただただ虚しいだけ。

 

考えてみると、大好きなバンドの彼らの曲を「好き」とか「最高」とか思うことはあっても「作ってくれてありがとう」と思うことはなかった。何故なら彼らは私が出会った時から「自分たちは好きなように音楽をやっているだけ」「また来てとは言わない。気が向いた時だけ聴きに来てくれればいい」「救われるのは勝手」と自分たちのスタンスを明確に表明してくれていた。それと同じように、これからは何に対しても「私が勝手に好きになっただけ」と思おう。勝手に好きになっただけだから、感謝の意を示す義理はない。その代わり、何も期待しないし、求めない。

 

というか、私は彼らの曲でなく、彼らのスタンスに先に惚れたんだ。惚れ惚れするほどかっこいい彼らが作る曲もまた、彼らと同じくらい惚れ惚れするほどかっこよかったのは、僥倖としか言いようがない。