珍しくアルバム評

 

 永久機関としての中間報告。

それが簡潔な感想だ。

弾丸の塊のインパクトとしては前作に比べると強くない(あくまで名盤の前作と比べると、だが)。いつも通りの通常運転の中に、いつも通り超いい曲が揃っている。名シングル4曲は無論のこと、待ってましたと手を叩きたくなる7曲目、歌詞とボーカルの歌の親和性が完璧な、見事な世界観に没入させる10曲目、3〜12曲目までの流れも非の打ち所がない。さすがアルバム論に定評のある氏の仕事ぶりである。5、8曲目も聴けば聴くほど味が出る。いつもの通りの、最高なアルバム。

 

一方で不安も残った。3曲目の、オーケストラアレンジの壮大なラブソング。これまでの曲からしたら、明らかに「狙いすぎ」の嫌いがあって、「どうした?」と思わずにはいられなかった。オーケストラアレンジでなかったら、例えば5曲目のような飾らないアレンジであればまた違ったかもしれない。彼らにしては珍しい部類に入るラブソングであったことも大きいかもしれない。今まで、彼らを好きじゃなくなる自分なんて想像できなかったが、初めて「自分はいつか彼らを好きじゃなくなる日が来るのかもしれない」と不安を覚えた。

ところが、某誌のインタビューでこの曲を「ファンをギリギリまで不安にさせるのが狙い」と言っていて少しホッとした。この不安な気持ちは想定されたものなのだ。彼らはファンが不安になるだろうことをわかっている。よかった。わかっているとわかっていないでは大きく違う。心を波立たせた不安が残したわずかな不穏は、きっと今後の彼らの音楽を聴く上で良質のスパイスとなるだろう。彼らは常に、ファンを裏切らないことではなく、自分たちを裏切らないことを念頭に置いているのだから。